自筆証書遺言保管制度を利用してみた
2020年の7月からスタートした自筆証書遺言保管制度。相続税を扱う税理士にとってももちろん関係してきますので、ネタとして利用してみました。
ちなみに冒頭の画像は「遺言書ほカンガルー」というキャラらしいです
目次
- ○ 自筆証書遺言保管制度とは
- ○ 遺言を遺した方がいいケース
- ・①前妻(夫)との間に子供がいて、再婚した場合
- ・②子供がおらず、自分の両親・兄弟姉妹と配偶者の仲が良くない場合
- ○ 保管制度を使うメリット・デメリット
- ・メリット
- ・デメリット
- ○ 保管制度を利用する手順
- ・①遺言書を書く
- ・②財産目録を作る
- ・③保管申請書を作る
- ・④住民票を準備する
- ・⑤法務局の予約をする
- ・⑥予約した日時に法務局に行く
- ・⑦窓口でチェック
- ○ まとめ
自筆証書遺言保管制度とは
これまで遺言書といえば公証人に作成してもらう「公正証書遺言」がほとんどでした。自筆証書遺言は簡単に作成できますが裁判所の検認や未発見・紛失のリスクなどがあるためあまり利用されないという状況でした。
遺言書があると遺産分割協議や財産の名義変更などの場面で相続人の負担はかなり軽減されます。
遺言を遺した方がいいケース
弁護士の先生から教えていただいたのですが、年齢などに関係なく特に遺言書を残しておいた方がいいケースがあります。どちらも実際に揉めた事例が多いそうです。
①前妻(夫)との間に子供がいて、再婚した場合
自分が死んだ場合、再婚した配偶者と前妻(夫)との子が遺産分割をすることになります。
前妻(夫)が生きていればもちろん口出しをしてきますし、子供にとって再婚相手は赤の他人どころか怨恨を抱いていることもあります。遺言があれば再婚相手が子供とのやり取りをする必要性も減らすことができます。
②子供がおらず、自分の両親・兄弟姉妹と配偶者の仲が良くない場合
自分が死んだ場合、配偶者と自分の両親(無くなっていれば兄弟姉妹)が遺産分割をすることになります。あとは①と同じですね。
保管制度を使うメリット・デメリット
メリット
① 費用が安い
わずか3900円で遺言書の保管と自分が死んだ際の通知までやってくれます。保管は電子アーカイブでされますので、東日本大震災の時のように法務局が被災しても紛失してしまう心配がありません。
② 財産目録を残すだけでも相続人の負担が減る
相続税のヒアリングをする際にも一番重点を置くのが財産の漏れが無いかです。財産目録を残さないまま亡くなった場合、相続人が故人の持ち物を整理しながら把握していくしかないですが、目録があれば心理的にも負担がかなり減ります(相続税の計算上は100%ではないですが)。特にネット銀行やネット証券の口座は手掛かりがない場合発見がかなり遅れたりといったことがあるそうです。
デメリット
① 遺言書の有効性についてはチェックしてもらえない
「全財産を○○に相続させる」とか「〇分の○を××に相続させる」といった簡単な内容で作成して、他に余計な事を書かなければ、自分で作ることに問題はないと思われます(遺留分侵害額請求などの話は置いといて)
② 意思能力の担保など、紛争になる可能性が残っている
弁護士さんなどの専門家は「やっぱり公正証書遺言のほうが安心」との意見が多いようです。相続財産が多かったり、相続人間に紛争の恐れがある場合は弁護士や司法書士に依頼したほうが良いでしょうね。それ以外のケースでは非常にメリットのある制度と思います。
保管制度を利用する手順
①遺言書を書く
余白などの要件を満たしたファイルが法務省のHPに置いてありますので、プリントアウトして自筆します
②財産目録を作る
エクセルで大丈夫です。様式も自由みたいですが、私の場合は
預金・・・銀行名、支店名、口座番号
株式・・・証券会社名、口座番号
不動産・・・土地と家屋の地番
保険・・・保険会社、保険の種類、証券番号
をA4一枚にまとめました。
余白が様式に入るように気を付けてプリントアウトして、署名押印します
遺言書と財産目録がセットになりますので、ページ数を振ります(各1枚でしたら1/2と2/2。ページ数も余白の中に入るように注意)
③保管申請書を作る
法務局のHPにあります。編集可能なPDFですので、入力してプリントアウトするだけ。
ページ数を書くのを忘れずに。窓口でたいていの人が指摘されるようです(まあその場で書けばいいですが)
④住民票を準備する
本籍が記載されたものを準備します
マイナンバーカードでコンビニ交付の登録をしておけばいつでもプリントできます。
遺言書・財産目録・申請書のコピーも念のため事前にとっておくといいと思います。
⑤法務局の予約をする
ネットで予約できます。住所地や不動産の所在地などを管轄する法務局を選択して、空いてる時間を選択します。
⑥予約した日時に法務局に行く
大津法務局の場合は「供託課」が窓口でした。たいていの法務局では入口のところに印紙の販売窓口があるので、3900円分の印紙を購入してから窓口へ向かいましょう
⑦窓口でチェック
余白などの様式が合っているか、申請書の記載漏れがないか、本籍地の記載などの確認をして問題が無ければ、免許証のコピーをとった後、登録に入られます。私の場合は財産目録の左余白が足りなかったので、ちょっとずらしてコピーしてもらいました・・・
登録は40~50分かかりますと言われましたが、実際は30分程度で完了しました。
まとめ
全ての手続きが完了すると保管証をもらえます。
その後、どこでこの制度を知ったのかアンケートが。職員さんが手書きで表に書いていたのをチラ見したところ、大津法務局では10月20~30件くらい、11月は10日の時点で10件くらいの利用があったようです。弁護士・司法書士からの紹介で利用するのが一番多いみたい。担当の方に「ブログで紹介しますねー」と言ったら「ぜひお願いします」と言われました。
年齢や家族関係に関係なく、遺言を遺すことで相続人や関係者の負担はだいぶ軽減されます。この保管制度によって遺言の普及が進むといいですよね!
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