自筆証書遺言保管制度まとめ(2019年9月時点)
2020年7月から、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まる予定です。
従来の自筆証書遺言と公正証書遺言の間のような制度で、遺言書の普及に一役買うのではないかと言われています。
ちなみに遺言は英語では「will」って言うそうです。意思ですね。
目次
- ○ 自筆証書遺言保管制度とは
- ○ 自筆証書遺言とは(民法968条)
- ・自筆証書遺言のメリット
- ・自筆証書遺言のデメリット
- ○ 遺言書を作るべき人
- ・遺留分
- ○ まとめ
自筆証書遺言保管制度とは
従来は自宅のタンスの奥や書斎の引き出しなどに保管されることが多かった自筆証書遺言について、法務局の遺言書保管官が保管し、画像情報として管理してくれる、という制度です。
遺言者の生存中は遺言者しか閲覧できず、遺言者の死亡後は、相続人等が閲覧請求できる、という制度となる予定です。
自筆証書遺言とは(民法968条)
自筆証書遺言は、遺言者が自ら遺言本文を書き、日付を記載して、氏名を自署し、押印する必要があります。
相続法(民法)の改正により平成31年1月13日から、「財産目録」の作成はパソコンで可能になりました。従来は認められていなかった通帳コピーや不動産の登記簿も添付できるようになりました(ただし、目録の各ページ・通帳コピー等に署名押印が必要)。
遺言の本文は依然として自筆しか認められない、ということとなっています。
自筆証書遺言のメリット
・費用がかからず、いつでも手軽に書くことができる
・秘密にできる(けど、見つけてもらえない可能性もある)
→遺言書保管制度では費用はかかるが、内容は家族に秘密にできます。
もちろん、遺言書保管制度が始まった後でも保管をしてほしくなければ従来の形での自筆証書遺言は残すことができます。
自筆証書遺言のデメリット
・家庭裁判所での検認時に方式不備で無効になるリスクが大きかった。(作成年月日や押印の漏れなどで)
・紛失、滅失の恐れがある
・破棄、隠匿、改ざんされる恐れがある
・検認手続きが必要となる
→遺言書保管制度でこれらのデメリットが減る!(と言われています)
遺言書を作るべき人
遺言書は資産家や死期が近い人が作るものと考えていてはいけません、資産額や年齢に関わらず下記のような方々は積極的に遺言書を検討しましょう。
・以前の配偶者との間に子供があり、再婚した。
→前妻(前夫)の子供と、再婚した配偶者とで遺産分割となるため。
・新婚で子なし、親兄弟と疎遠
→妻(夫)と自分の親・兄弟とで遺産分割となるため。
・婚外子(隠し子)がいる
→当然、もめます
・相続権のない者に遺産をわけてあげたい
・自営業者で、事業を後継者にまとめて引き継ぎたい
・相続人がいない
→相続人がいない場合は基本的に国庫に入ることになります。
遺留分
法定相続人が亡くなった方の兄弟姉妹「以外」の場合には、法定相続分の半分を取得しうる権利「遺留分」が認められます。子供のいない夫婦で、親もすでに亡くなっている場合などは残された配偶者と、兄弟姉妹での遺産分割となるのですが、ここで遺言書を作っておくことで全財産を配偶者に相続させることができます。
まとめ
無くなった方が遺言を残している割合は遺言書欧州は80%、米国は50%、日本は10%以下といわれています。
日本は多死社会で相続人同士の争いも増えてきており、配偶者居住権や預貯金の取扱いなど、相続法(民法)の改正は国としては争族を減らしたい方向に動いていますが、遺言書の普及こそが一番の争族対策になるのではないでしょうか。
相続税に遺言控除を設ける、という話もありますが、これができれば一気に遺言の普及は進むでしょうね。
この自筆証書遺言の保管制度については2020年7月の開始まで1年を切っていますがまだ決まっていないこと(手数料や窓口での内容チェックなど)が多いです。相続税を扱う税理士にとっても実務に大きく影響してきますので、引き続き情報は追いかけていきます!
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