退職金と確定拠出年金の得する受け取り方
守山市の弓引く税理士、酒屋です。
金融庁が老後資金に2000万円必要と試算して、老後のマネープランに対してちょっとした騒ぎになっています。
渋沢栄一の著書をもじって「老後と算盤」なんていう本でも書いてみようかな、まだタイトルだけですが。
老後の収入減としては退職金と年金(公的・私的)がメインで、加えて賃金や資産運用をベースに考える必要がありますが、今回は退職金について税制面で気を付けることをまとめました。
退職金は所得税法上「退職所得」という区分になり、課税面でもかなり優遇されています。
所得税法上「退職所得」になるものは以下のような収入です。メインは「会社からの退職一時金」と「確定拠出年金(DC)」になります
会社からの退職一時金
・会社の規定に従ってもらえる
・いつ、いくらもらえるのかは会社の規定によって様々。60歳定年時に退職金受け取り、その後再雇用というケースが多い
確定拠出年金(DC)の一時金
・60歳以降、受取方式(一時金or年金)ともらう時期が選べる
・「年金」という名前でも一時金で受け取る人が多い
小規模企業共済・中小企業退職金共済の一時金
・個人事業者の退職金。もらう時期が選べる
会社が倒産した時に、国から弁済を受けた未払賃金
・会社から賃金をもらえなくなった時に未払賃金立替制度を使った場合。
会社と裁判沙汰になったときの和解金
・和解内容が退職金としてもらうものなら退職所得
・裁判上の理由で源泉徴収されない、源泉徴収票も出ないケースが多いらしい
この他に「死亡退職金」は、退職金という名前でも所得税の対象にならず、相続財産(みなし相続財産)として相続税の対象になります。
退職金への税金が優遇されているのは具体的に次の3点です。
・勤続年数に応じた退職所得控除がある
・退職所得控除後の1/2に対して課税する
・分離課税といって、他の所得があっても合算せずに税率を適用する(=高税率になりにくい)
具体的な計算式はこちら
(退職金-退職所得控除)×1/2×所得税率・住民税率
※役員で勤続年数が5年以下の場合は1/2の計算は無し
退職所得控除=勤続年数×40万円(20年超の分は70万円)
※80万円未満の場合は80万円控除できる。
計算例としては、
18歳で入社、60歳で定年=42年分(2,340万円)控除
30歳で中途入社、60歳で定年=38年分(1,500万円)控除
となります。この退職所得控除額を超える退職金をもらうと、所得税と住民税がかかることになります。
退職所得控除額を計算するうえで勤続年数が重要で、退職所得に関する税法の規定もここに集中しています。特に複数回の退職金を受け取る場合は「勤続年数」をうまく使えるかどうかがポイントとなります。以下、太字の部分が勤続年数の計算ルールです。これらの規定に引っかかっても、最低でも80万円の控除と1/2の計算は受けることができます。
・同一年に2か所以上から退職金を受け取る場合、受取額は合算する。勤続年数は、重複期間は除外して計算する
・基本的に一度利用した勤続期間は再利用できないが、先に受け取った退職金で退職所得控除額の方が多かった場合は、その余った分の控除額を利用できる
近年の退職金制度では「会社からの退職一時金」と「確定拠出年金(DC)」の二本立てになっているケースが多いです。「会社」と「DC」はお互いに「他の支払者」になりますので別の年に受け取る場合は下記の規定に注意する必要があります。
・前年以前4年間に他の支払者から退職金を受け取っている場合にはその際の勤続年数と重複している期間はカウントできない
・「DC」を一時金で受け取る際は、他の退職金が前年以前14年以内にあると、他の退職金と重複する勤続期間は対象外となる(=所得税の負担が増える)
→DCを後に受け取る場合はなぜか14年も空けないと不利になるというルールになっています。逆にDCを先に受け取る場合は4年空ければいいので、60歳でDC、65歳で会社の退職金という受け取りができればベストです。ただ、会社の退職金は受け取る時期を選べないケースも多いので、60歳定年の会社でしたら同一年に受け取るか、DCを年金方式で受け取るか・・・という判断になってきます。
60~64歳の期間にDCを年金方式で受給する。年額70万円までは公的年金控除額の範囲内なので非課税。繰下げ受給なら70歳まで、65歳以上は公的年金控除額が年120万になるなど、検討の余地は広がりますが、この辺りの話はまたの機会に。
金融庁が老後資金に2000万円必要と試算して、老後のマネープランに対してちょっとした騒ぎになっています。
渋沢栄一の著書をもじって「老後と算盤」なんていう本でも書いてみようかな、まだタイトルだけですが。
老後の収入減としては退職金と年金(公的・私的)がメインで、加えて賃金や資産運用をベースに考える必要がありますが、今回は退職金について税制面で気を付けることをまとめました。
退職金の種類
退職金は所得税法上「退職所得」という区分になり、課税面でもかなり優遇されています。
所得税法上「退職所得」になるものは以下のような収入です。メインは「会社からの退職一時金」と「確定拠出年金(DC)」になります
会社からの退職一時金
・会社の規定に従ってもらえる
・いつ、いくらもらえるのかは会社の規定によって様々。60歳定年時に退職金受け取り、その後再雇用というケースが多い
確定拠出年金(DC)の一時金
・60歳以降、受取方式(一時金or年金)ともらう時期が選べる
・「年金」という名前でも一時金で受け取る人が多い
小規模企業共済・中小企業退職金共済の一時金
・個人事業者の退職金。もらう時期が選べる
会社が倒産した時に、国から弁済を受けた未払賃金
・会社から賃金をもらえなくなった時に未払賃金立替制度を使った場合。
会社と裁判沙汰になったときの和解金
・和解内容が退職金としてもらうものなら退職所得
・裁判上の理由で源泉徴収されない、源泉徴収票も出ないケースが多いらしい
この他に「死亡退職金」は、退職金という名前でも所得税の対象にならず、相続財産(みなし相続財産)として相続税の対象になります。
退職金への課税
退職金への税金が優遇されているのは具体的に次の3点です。
・勤続年数に応じた退職所得控除がある
・退職所得控除後の1/2に対して課税する
・分離課税といって、他の所得があっても合算せずに税率を適用する(=高税率になりにくい)
具体的な計算式はこちら
(退職金-退職所得控除)×1/2×所得税率・住民税率
※役員で勤続年数が5年以下の場合は1/2の計算は無し
退職所得控除=勤続年数×40万円(20年超の分は70万円)
※80万円未満の場合は80万円控除できる。
計算例としては、
18歳で入社、60歳で定年=42年分(2,340万円)控除
30歳で中途入社、60歳で定年=38年分(1,500万円)控除
となります。この退職所得控除額を超える退職金をもらうと、所得税と住民税がかかることになります。
勤続年数の計算ルール
退職所得控除額を計算するうえで勤続年数が重要で、退職所得に関する税法の規定もここに集中しています。特に複数回の退職金を受け取る場合は「勤続年数」をうまく使えるかどうかがポイントとなります。以下、太字の部分が勤続年数の計算ルールです。これらの規定に引っかかっても、最低でも80万円の控除と1/2の計算は受けることができます。
・同一年に2か所以上から退職金を受け取る場合、受取額は合算する。勤続年数は、重複期間は除外して計算する
・基本的に一度利用した勤続期間は再利用できないが、先に受け取った退職金で退職所得控除額の方が多かった場合は、その余った分の控除額を利用できる
近年の退職金制度では「会社からの退職一時金」と「確定拠出年金(DC)」の二本立てになっているケースが多いです。「会社」と「DC」はお互いに「他の支払者」になりますので別の年に受け取る場合は下記の規定に注意する必要があります。
・前年以前4年間に他の支払者から退職金を受け取っている場合にはその際の勤続年数と重複している期間はカウントできない
・「DC」を一時金で受け取る際は、他の退職金が前年以前14年以内にあると、他の退職金と重複する勤続期間は対象外となる(=所得税の負担が増える)
→DCを後に受け取る場合はなぜか14年も空けないと不利になるというルールになっています。逆にDCを先に受け取る場合は4年空ければいいので、60歳でDC、65歳で会社の退職金という受け取りができればベストです。ただ、会社の退職金は受け取る時期を選べないケースも多いので、60歳定年の会社でしたら同一年に受け取るか、DCを年金方式で受け取るか・・・という判断になってきます。
年金方式が有利になる場合も
60~64歳の期間にDCを年金方式で受給する。年額70万円までは公的年金控除額の範囲内なので非課税。繰下げ受給なら70歳まで、65歳以上は公的年金控除額が年120万になるなど、検討の余地は広がりますが、この辺りの話はまたの機会に。
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