年末調整の注意点(マイナー論点)
11~12月といえば世間は年末調整が花盛りでして、ネット上にも年末調整の記事が山ほどあふれています。
基本的な話はそちらに譲るとして、うちではマイナーな論点をいくつかあげようかと思います。
目次
- ○ 何年分の書類をだすのか
- ○ 受けられる所得控除をチェックする
- ○ 細かい注意点
- ・社会保険料控除
- ・生命保険料控除・地震保険料控除
- ・寡婦(寡夫)控除
- ・扶養控除
- ・被扶養者(家族)の所得
- ・令和2年分の所得の見積額
- ○ 扶養家族の所得を証明しなければいけないのか
- ○ まとめ
何年分の書類をだすのか
今年は提出書類の年表示がおもしろいことになっています。多い人で主に3種類の書類を提出するのですが
「平成31年(2019年)分」扶養控除等(異動)申告書
「令和元年分」配偶者控除等申告書
「令和元年分」保険料控除申告書
の3種類。扶養控除等(異動)申告書っていうのは法律上、その年最初の給与の支払い時までに提出することとなっていますので、まだ令和という元号が発表されていなかった時点での書類なのです。年初の時点での扶養の状況を申告して、年中に異動があったら年末調整でもう一回申告する、という位置づけになっています。
会社によっては「令和2年分」の扶養控除等(異動)申告書でもって2019年分の扶養控除を計算することもあるかもしれませんが、扶養の所得基準が来年から変わりますのでちょっと注意が必要かもしれません。
受けられる所得控除をチェックする
年末調整で受けられる所得控除は11種類。税額控除で取得2年目以降の住宅ローン控除も受けられます。自分は適用できる控除がないか、毎年ざっと確認すると良いです。基本的に控除は「申告」しないと受けられません。適用漏れがあってもあくまで自己責任です。会社から説明がなかったとか言っても通じないです。
【自分に関係する控除】
障害者控除、寡婦(夫)控除、勤労学生控除、基礎控除
【家族に関係する控除】
配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除
【自分、家族が支払ったお金に関する控除】
社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除
細かい注意点
控除の種類ごとに細かい論点を解説します。
社会保険・生命保険・地震保険とも自分が「支払った」という部分がポイントとなります。「負担した」「立て替えた」とは意味が異なりますので、自分以外の家族の通帳から引落しであったり、カード払いなどをされている場合は、例えば後で同額を補填してあげた、といった主張をしてもアウトということになります(バレない可能性もありますが、「支払って」いない時点でアウト)。
社会保険料控除
年金(基金も含む)、健康保険料、介護保険料、労働保険料、外国の同様の社会保険料などが控除の対象となります。
よくある適用漏れが、大学生の子供の国民年金を払ってあげたというケース。お子様が就職するまでの2~3年程度である場合が多いので、社会保険料控除を受け忘れることが多いです。
配偶者やお子様がアルバイトをしすぎて一時的に国民健康保険料を払った、というケースも受け忘れることがあるかもしれません。
ちなみに保険料を支払ったという証明書は、年金については発行されますが健康保険は証明書が発行されない場合が多いです。健康保険料について控除を受ける際、証明書は基本的に不要なんですが、領収書をとっておくよう注意が必要です。
生命保険料控除・地震保険料控除
配偶者やお子様が契約した保険であっても、代わりに支払ってあげれば生計一でなくても、控除証明書の名義が自分でなくても、控除を受けられます。あまりないケースですけど。
それより多いケースとしては離婚・再婚などした際の生命保険料控除についても注意が必要です。自分が支払った時点で婚姻関係にあったものについては控除が受けられますので、年内に離婚・再婚などした場合でそれぞれ相手名義の生命保険料を支払った場合は、両方受けられる、ということになります。配偶者控除は12月31日時点の配偶者さんについて受けます。
寡婦(寡夫)控除
離婚や死別で独身になった人が受けられます。寡婦は女性、寡夫は男性で、女性については特別寡婦など、若干優遇されています。
男女差別が・・という見方もありますのでいつかは「ひとり親控除」なんかに改称するんでしょうかね。
扶養控除
特定扶養親族(19歳以上23歳未満の扶養親族は控除額UP)
同居老親(70歳以上の尊属と同居している場合は控除額UP)
など、申告を忘れるだけで適用漏れとなるリスクもありますので要注意です!
被扶養者(家族)の所得
配偶者や扶養親族の「所得の見積額」に、年収を書く人は非常に多いです。担当者の善意で確認・修正してもらえることもありますが、ここを誤って控除が適用漏れても基本的に自己責任となってしまいます。
アルバイト・パートの場合の「所得」は、「年収-給与所得控除」で計算します。年収(給与の額面)が100万円の場合、給与所得控除が65万円ですので、所得は100万-65万=35万となり、「合計所得金額が38万円以下」なので、扶養の対象となる。という判定をします。
令和2年分の所得の見積額
令和2年(2020年)は、給与所得控除の最低額が65万円→55万円に改訂され、基礎控除が38万円→48万円となります。扶養の判定基準も所得が38万円→48万円となりますので、「令和2年分」の扶養控除等(異動)申告書に記載する所得の見積額も変わることになります。
扶養家族の所得を証明しなければいけないのか
配偶者や扶養親族の所得の証明を出すように指示する会社もありますが、税法上は本人の「申告」でOKとなっています。まあ会社が出せと言ったらサラリーマンとしては断るのは難しいですよね。どうしても嫌な場合は確定申告で扶養控除を受けるなどを検討されてはいかがでしょう。
海外に扶養家族がいる場合は、親族情報や送金情報といった証明書類の提出が必要とされています。
まとめ
マイナーな論点だけを記事にしましたが結構な分量になってしまいました。
年末調整や確定申告の記事は世の中にあふれていますが、情報の海からこのページにたどり着いた人のお役に立てば幸いです。
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