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個人事業では「固定資産売却益・売却損」は使いません

こんにちは!滋賀県守山市の弓道税理士、酒屋です

個人事業主が事業用の固定資産(土地・建物・機械装置・車両運搬具・工具器具備品など)を売却した場合、法人とは異なる特殊な処理となります。

目次

固定資産の売却をした場合

簿記の勉強をした方でしたら、固定資産の売却をした場合は残存簿価と売却価格の差額が固定資産売却益や固定資産売却損となるのが通常と考えます。
簿記では個人事業の処理は勉強しませんので、この固定資産の売却や事業主勘定などは取っつきにくいでしょうね。

譲渡所得になる

個人事業主が事業用の固定資産を売却した場合は「譲渡所得」という区分になります。
この譲渡所得は区分がいろいろとありまして土地・建物は「分離譲渡所得」、それ以外の資産は「総合譲渡所得」となり、さらに所有期間に応じて「長期譲渡」と「短期譲渡」とに分かれます。
売却損がでる場合には譲渡所得が生じないため課税はされません、また、総合譲渡所得には年50万円の特別控除があるため、土地建物以外の固定資産の売却益が50万円以下の場合も課税されないことになります。

どこに書いてある?

ちなみに法令で直接、「固定資産の売却は譲渡所得」と書いてある箇所は無いです。
譲渡所得の定義の中に、「棚卸資産・・・は事業所得」と記載されていますが、ここに固定資産が含まれていないため、譲渡所得という取り扱いになります。
また、所得税基本通達49-54(年の中途で譲渡した減価償却資産の償却費の計算)を読みますと、「・・・減価償却資産について譲渡があった場合・・・償却費の額については・・・譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に含めないで(略)」とあります。「償却費は譲渡所得に含めない」ということは間接的に、減価償却資産本体は譲渡所得ということですね。

「除却損」は事業所得になる

会計ソフトで個人事業の経理をしていると、選択できる勘定科目に「固定資産売却益・売却損」はありませんが、「固定資産除却損」はあるはずです。
微妙な違いですが、除却損は事業所得になります。
固定資産を処分する際は、売却するか除却するかで取り扱いが変わることになります。
売却損なら譲渡所得になって税額は0となりますが、除却した場合は事業の経費にできますので所得と相殺ができ、税額を減らすことができます。ただし売却の場合は多少なりとも現金収入が得られますので、どちらが有利か検討した方が良いかもしれません。

一括償却資産、少額減価償却資産の売却は事業所得

一括償却資産(取得価額が20万円未満で、3年で償却する資産)、少額減価償却資産(取得価額が10万円未満の資産)は「たな卸資産に準ずる資産」にあたり、売却益・売却損は事業所得に入れる必要があります。
ところが青色申告者の少額減価償却資産の特例を受ける、30万円未満の少額資産については「たな卸資産に準ずる資産」に含まれないため、譲渡所得の対象になります。
ややこしいですが、注意が必要です。ちなみに償却資産税でもここは同様の線引きがされています。

少額重要資産は譲渡所得

レアな規定ですが所得税基本通達33-1の2(少額重要資産の範囲)に「少額重要資産」というものが規定されています。
一括償却資産、少額減価償却資産の中でも「その者の業務の性質上基本的に重要なもの」は固定資産に近いので、譲渡所得にしますという規定です。具体例が思い浮かばないので、実務で出会う場面もほぼ無いと思います。。

牛の場合、鶏の場合

お肉になる牛は販売目的なので棚卸資産、牛乳を出してくれる雌牛は仔牛のうちは棚卸資産、牛乳がとれるようになったら固定資産。
同様にお肉になる鶏は棚卸資産、卵を産んでくれる雌鶏はひなの間は棚卸資産、成長したら固定資産。
棚卸資産の場合、飲食料品なので消費税の軽減税率の対象ですが、固定資産の場合は軽減税率は適用されません。
滋賀県の農業王国、東近江の税理士さんに聞きましたが、生物の税務はとっても奥が深いそうです。

まとめ

記事中では「譲渡所得か事業所得か」で書きましたが、事業所得の箇所は不動産所得に関する固定資産も同様の取扱いです。
固定資産の売却益・売却損を事業所得(不動産所得)にするか譲渡所得にするかで税額にも影響がでてきます。税金の過少申告や過払にならないよう、個人事業主の場合には注意が必要ですね

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